戦略的創造研究推進事業 CREST|二酸化炭素資源化を目指した植物の物質生産力強化と生産物活用のための基盤技術の創出

研究概要

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山一面を覆う数万本の竹も、もともとは一本の竹が地下茎により増殖したクローンです。多くの植物が種子を生産して繁殖する種子繁殖性を利用している一方、竹のように生殖を行わず地下茎による栄養繁殖性を保持した植物が存在します。地下茎で栄養繁殖する植物は、タケやスギナなど自生しているものから作物にいたるまで多岐にわたり、その中には、旺盛な繁殖力を示し迅速に個体群を増殖する種も多く存在します。そこで、二酸化炭素資源化を目指した植物の物質生産力強化のための1つのアプローチとして、植物の旺盛な栄養繁殖力による高バイオマス化に着目しました。地下茎による栄養繁殖性とその旺盛性を分子レベルで理解し、人為的に制御できれば、この特性を作物に付与することで高バイオマス化が期待でき、二酸化炭素資源の有効活用につながると考えられます。

しかしながら、これまで植物の地下茎形成と伸長のメカニズムは殆ど明らかにされていません。この理由として、栄養繁殖を行う植物が種子繁殖をほとんど行わないため遺伝学的な解析が困難であること、モデル植物のシロイヌナズナや栽培イネに地下茎による栄養繁殖性を保持するものが無く、分子遺伝学的な研究の対象と成りえなかったこと等が考えられます。

世界の様々な地域で生育する22のイネ野生種と2つのイネ栽培種は一般的に種子繁殖を行うが、アフリカ原産の野生イネOryza longistaminata (以下ロンギスタミナータ)は、地下茎によるクローンの増殖によって栄養繁殖を行ない(図1)、僅かな期間で辺り一帯を埋め尽くす旺盛な繁殖力をもっています
通常地下茎で増殖するロンギスタミナータですが、まれに出穂し、受精により種子を生産することもできます。栽培イネと交雑が出来ないイネ野生種が多い中で、ロンギスタミナータは栽培イネと交雑することが出来るため、ロンギスタミナータを供試材料とすることで、植物の栄養繁殖性の研究に遺伝学的なメスをいれることが可能です。

地下茎による栄養繁殖性のメカニズムと旺盛な生育力の解明は、様々な作物の地下茎による栄養繁殖化を可能とするなどその応用と発展性が期待できます。例えば、ソルガムやサトウキビなどのエネルギークロップを地下茎化し、繁殖力を旺盛にすることで、高バイオマス化や農作業の軽減による省力化につながる可能性があります。また、それに付随して、食糧とは競合しないエネルギークロップの地下茎化は、“植物地下資源”を生み出すかもしれません。

本課題では、ロンギスタミナータを研究材料とし、遺伝学的観点から地下茎形成に関わる遺伝子座の解析、形態学の観点から地下茎成長パターンの解析、生理学の観点から植物ホルモンや栄養バランスによる地下茎の成長制御機構の解析、分子生物学的観点から地下茎形成に関与する遺伝子の同定と機能解析を行い、作物を地下茎繁殖へ改良する基盤技術の作出を目指します。

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